脳梗塞後に高血圧の薬をやめても大丈夫?漢方との上手な付き合い方
脳梗塞後の高血圧管理は自己判断しないことが大切
脳梗塞を経験した方の高血圧治療では、医師から処方された降圧薬を継続しながら血圧を安定させることが、再発予防の基本とされています。

先日、私が勤務する漢方薬局で印象に残る出来事がありました。
ご高齢の男性が、奥様のために「救心感應丸氣」を求めて来店されたのです。
お話を伺うと、奥様は以前に脳梗塞を発症されたものの、幸い大きな後遺症はなく回復されたそうです。しかし、その後は高血圧をとても心配され、高層マンションから低層住宅へ引っ越されたとのことでした。
「高い場所に住むと血圧が上がるのでは」と不安に思われたそうですが、医学的にはエレベーターの利用や高層階での生活が、高血圧を直接悪化させるという根拠はほとんどありません。
エレベーターと高血圧に関係はある?
通常のエレベーターは気圧の変化が非常に小さいため、乗るだけで血圧が大きく変動することはないと考えられています。

むしろ注意したいのは、日常生活で血圧が急激に上がる場面です。
例えば、
・重い荷物を持って歩く
・強いストレスや緊張
・寒暖差の大きい環境
・排便時に強くいきむ
このような状況では、一時的に血圧が上昇することがあります。
そのため、高層階よりも「急がず、無理をしない生活」を心掛けることのほうが重要とされています。
漢方に替えるために降圧薬をやめたという話
さらに男性から伺ったのは、「病院で処方されていた高血圧の薬をやめて、漢方だけに替えた」というお話でした。
私たち登録販売者は、
「漢方を取り入れること自体は悪いことではありませんが、処方薬を中止する場合は、必ず主治医に相談してください。」
とお伝えしました。
実際、薬局でも「血圧が下がったから薬をやめた」「漢方だけで様子を見たい」という相談を受けることがあります。
しかし、自己判断で降圧薬を中止することには注意が必要です。
なぜ自己判断で薬をやめてはいけないの?
高血圧の薬は、単に血圧を下げるためだけではありません。
血圧を安定させることで、
・脳出血
・心筋梗塞
・心不全
といった重大な病気のリスクを減らす目的があります。
特に脳梗塞を経験した方は、高血圧が再発の大きな危険因子になるため、血圧管理は非常に重要です。
薬の種類によっては、急に服用を中止すると血圧が大きく上昇することもあり、かえって危険な状態になる場合があります。
漢方薬は併用という考え方もある
漢方薬には、体質改善や不調の緩和を目的として用いられるものがあります。
一方で、本日(2026年8月1日)時点では、漢方薬だけで高血圧治療薬の代わりになるという十分な医学的根拠は示されていません。
そのため、
「降圧薬をやめて漢方だけにする」
というよりも、
「降圧薬を続けながら、医師や薬剤師と相談して漢方を併用する」
という方法が選ばれることもあります。
漢方は患者さんの体質や症状に合わせて処方されるため、適切に活用すれば治療の一助となる場合があります。
薬を減らせるケースもある
もちろん、一生同じ量の薬を飲み続けなければならないとは限りません。
減塩や適度な運動、体重管理、禁煙、節酒など生活習慣の改善によって血圧が安定し、家庭血圧や診察時の数値が良好であれば、医師の判断で薬を減量したり中止したりできるケースもあります。
ただし、それは定期的な診察と血圧測定を続けながら慎重に判断されます。
自己判断で服薬をやめることとは全く異なります。
漢方薬局で働いて感じること
私は漢方薬局で勤務していますので、漢方薬の良さを実感する場面はたくさんあります。
それでも、お客様にはいつも「病院の治療を自己判断で中断しないこと」が大切だとお伝えしています。
漢方薬と西洋薬は、対立するものではありません。
それぞれの長所を生かしながら、安全に治療を続けることが何より重要だと感じています。
まとめ
脳梗塞後の高血圧管理では、降圧薬を自己判断で中止することは勧められていません。
漢方薬は体質改善や体調管理に役立つことがありますが、高血圧治療薬の代わりになるとは考えられていません。
漢方を取り入れたい場合は、主治医や薬剤師、漢方に詳しい医療従事者に相談しながら、現在の治療と両立させることが安心につながります。
病気を再発させないためにも、「薬をやめる」のではなく、「相談して治療を続ける」という意識を大切にしたいですね。
参考資料
・厚生労働省「高血圧に関する情報」
https://www.mhlw.go.jp/
・日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」
https://www.jpnsh.jp/
・日本脳卒中学会
https://www.jsts.gr.jp/
・日本循環器学会
https://www.j-circ.or.jp/
・公益社団法人 日本薬剤師会
https://www.nichiyaku.or.jp/


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